2016-10-6

『それは、演劇界から歌舞伎が消えるのと同じ事なのです』

Kyoto Design Factory | カテゴリー: 着物あれこれ

文化講座

着物や帯の染織図案は、著作権法上『※応用美術』と規定されています。
明治時代以来、着物や帯の染織図案は、一部の著名な画家の作品以外、
殆どは単なる下絵として扱われてきました。
結果的に、着物や帯の染織図案は、芸術でもデザインでもないという、
実に曖昧な存在となってしまいました。

法律の専門家にたずねる尋ねたところ、和装の染織図案家は、現在も
自ら著作権を主張しない限り、権利を認められることは難しいとのことです。

結果的に、これまでの商習慣で、売り渡した段階で著作権も使用権者に
譲渡されたことになっています。
図案家は、本来著作権を主張できる自営業者であるにも関わらず、
それを当たり前の事として、今日までその商習慣は続いてきました。

昨今、古くから図案を所有する染織メーカーが、アーカイブ事業を立ち上げ、
手持ちの図案を新たにソフト化する再利用ビジネスを始めています。
また、着物生地や帯地を再利用して、和装以外の様々な商品(インテリア、
和風アート作品など)が作られていますが、それらの商品は図柄が
主要コンテンツであるにも関わらず、その柄を描いた図案家の存在自体が
なかったことの様に扱われているのが実情です。
その結果、本来著作権者であるはずの図案家は、何の恩恵も受けられず、
着物産業の市場規模の縮小の影響をもろに受け、後継者を育てる余裕もなくなり、
染織図案専門家として生計を立てる事が困難になり、減少の一途を辿っています。
このままでは、後十年以内に本物の和柄を描ける和装図案家は消えてしまいます。
現実に、絵さえ巧ければ、誰でも着物の図案は描けるのですから、
一般の人からすれば、大した問題ではないかもしれません。
では、何が問題なのでしょうか?

着物の図案家は普通の「デザイナー」とは違う特別な存在です。
1200年以上続く、日本の伝統文様や伝統デザイン様式の型の伝承者なのです。
このことは、演劇界に例えたら解りやすいと思います。
現在、演劇には、伝統演劇、新劇、小劇場演劇、アングラ演劇、大衆演劇、
新派劇、ミュージカル、児童劇、新喜劇、路上演劇、さらに海外演劇やオペラ等、
様々なものがあります。そうです、その気になれば、誰でも演劇の世界に入って、
人前で演じることはできるのです。その演劇界から『能、狂言、歌舞伎』が
消えると思って頂いたら、お解りいただけるでしょうか?

※応用美術とは?
◉意匠権と著作権の双方で保護される図柄があり得る。
 但し、意匠の場合は物品に具現化されている必要があり、権利は具現化した者に
 帰属(登録必要)する。

 染織図案等のいわゆる応用美術が著作権の対象となるかは著作権法上明確ではない。
 現行著作権制定時(昭和46年)の著作権審議会の答申によれば「図案その他量産品の
 ひな形又は実用品の模様として用いられることを目的 とするものについては、
 著作権法においては特段の措置は講ぜず、原則として 意匠法等の工業所有権制度
 による保護に委ねるものとする。但し、それが純粋美術としての性質を有するもの
 である時は、美術の著作物として取り扱われるものとする。