2016-9-13

『文様に託された願いと物語』

sysadm | カテゴリー: 着物あれこれ

yutacollection


この振袖は伝統的な型と形を継承しつつ、大胆な構図で描かれています。

察するところ親が娘の為に作ったであろう、この振袖の図柄には薬玉と檜扇、御所車、
そして背景に御簾と雲が描かれています。

薬玉は、邪気を避ける長寿の象徴として描かれています。
そして、檜扇は形が優美で、御所車は装飾性に富んでいます。
共に位の高い人の持ち物、乗り物であるところから、
富の象徴として描かれています。
これらは王朝趣味の文様として長く用いられたことから、
吉祥文様として現代でも根強い人気があります。

現代でも人気がある『古典柄』と呼ばれる着物の図柄の大多数は江戸時代以降に好まれた
このような吉祥文様を継承または模倣したものです。
それが、明治、大正、昭和となっても伝統文様として継承されてきました。
しかし、時代と共に少しずつ、図柄に込められる意味や謂れに対する関心が
薄れているように思います。
言葉や文字以外のメッセージとして図柄に込める親の心や物語。
時代は変わっても、親や祖父母が子や孫の幸せを願い、託す思いは同じです。
婚礼やその他の式典での衣装として、また海外での礼装として、
着物の継承されるべき重要なことの一つが、図柄に込められた意味謂れだと思います。


伝統文様研究家
成願義夫